学会発表 |
アロニア果汁摂取による遺伝子発現変化 |
山根拓也 |
第55回日本栄養・食糧学会近畿支部大会 2016年10月22日 |
要旨 |
アロニアは北米原産の果実で、メディカルフルーツとして多様な機能性があることが知られています。これまでの研究で私たちはdipeptidyl peptidase IV およびα-グルコシダーゼがアロニア果汁成分によって阻害され、糖尿病モデルマウスであるKKAyマウスにアロニア果汁を摂取させると、血糖値の低下や脂肪の減少が起こることを明らかにしました。さらに高脂肪食を摂取したマウスにアロニアを摂取させると、高脂肪食摂取による中性脂肪やLDL-コレステロールの上昇を抑制し、肝臓の軽度な繊維化を改善することをこれまでの研究で見出しています。その際、肝臓における遺伝子発現変化を網羅的に解析したところ、insulin growth factor binding protein-1 (Igfbp1)およびgrowth arrest and DNA damage, gamma (Gadd45g)といった遺伝子発現が高脂肪食摂取によって減少し、アロニア摂取によってその減少が回復することを見出しました。本研究では、アロニア果汁を摂取させたC57BL6マウスとKKAyマウスの肝臓において、Igfbp1とGadd45g遺伝子の発現がどのように変化するのかについて検討を行ないました。アロニア果汁を摂取させたC57BL6マウスとKKAyマウスの肝臓からRNAを抽出し逆転写したcDNAを鋳型として、Igfbp1とGadd45g mRNAの発現をRT-qPCR法により解析しました。その結果、アロニア果汁を摂取させたC57BL6マウスとKKAyマウスの肝臓においてIgfbp1 mRNAの発現は増加傾向でした。また、Gadd45g mRNAの発現はアロニア果汁摂取で増加しました。以上からIgfbp1、Gadd45g mRNAの発現変化はC57BL6とKKAyマウス肝臓において同様であり、Igfbp1、Gadd45gの転写調節に関与する成分がアロニア果汁に含まれていると考えられました。 |
アロニア果汁摂取によりマウス肝臓においてIgfbp1 mRNA発現が増加することが明らかとなりました(図1)。 |
図1 肝臓におけるIgfbp1 mRNA発現変化 |
また、肝臓におけるGadd45g mRNA発現もアロニア果汁摂取で増加しました。(図2)。 |
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図2 肝臓におけるGadd45g mRNA発現変化 |
以上の結果から、C Igfbp1、Gadd45g mRNAの発現変化はC57BL6とKKAyマウス肝臓において同様であり、Igfbp1、Gadd45gの転写調節に関与する成分がアロニア果汁に含まれていると考えられました。今後、これらの遺伝子の転写調節に関与する物質の同定を行う必要があります。 |