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著者ご紹介
医学博士、栄養士、 二葉栄養専門学校講師、女子栄養大学評議員、
フードドクターとして、健康情報、栄養知識、料理の分野で幅広くご活躍。
著書に「あなたの寿命は食事で延ばせる」「食べ物は クスリだ!」「野菜、果物etc.の色素パワーが効く」 「百まで生きて三日寝て死のう」ほか多数。
骨は生きている ---上手にカルシウムを摂りましょう---
医学博士 東畑 朝子
戦後、毎年栄養調査が行われていますが、飢えの時代は数年で終わり、1950年 にはエネルギーもタンパク質も満たされるようになりました。70年代に入ると、経済の高度成長と相まって、いわゆる飽食の時代に入ります。そうなるとエネルギー過剰が目立ち、人は肥満の害を心得、少食にしようと努力するようになりました
その反面、カルシウムの摂取量はずっと不足してきました。1950年の270mgは 仕方がないとしても、500mgを越えたのはようやく70年、そして今日まで500mgあたりを低迷しています。基準量は600mgなので、90%以上は満たされていることになりますが、その状態30年に及ぶとあっては考えざるを得ません。ましてカルシウ ムの吸収率は、牛乳・乳製品が40~80%、その他は10~40%で、実際に体内に取り込まれている量はずっと少なくなってしまうでしょう。今、私達の食生活は世界の一級クラスといわれ、欧米諸国も認めるようになりました。それなのにカルシウム摂取量が不足しているのは、牛乳・乳製品の食べ方が少ないために違いありません。
”日本型食生活”のよさが喧伝されていますが、在来の日本型食生活では二つの欠点が目立ちます。それはカルシウムの不足と食塩が過剰になり勝ちなことです。 ご飯中心の食事は、欧米の肉食中心の食事よりは、はるかに健康的ですが、食塩 とカルシウムの点は是正していかなくてはならないでしょう。
牛乳・乳製品のカルシウムの吸収率は40~80%と高いのですが、その理由はそれらの食品の栄養バランスの良いことにあります。カルシウムの吸収をよくするには、適度のタンパク質とビタミンDを必要とします。またカルシウムと燐の比率も大切で、カルシウム1.0に対し燐も1.0せいぜい1.2が望ましいのですが、もともとカルシウ ムの含有量の多い牛乳・乳製品のバランスは、カルシウム1.0に対し0.8~0.9できわめて良いバランスです。
日本人のカルシウム不足は、かっては背の低いこと、今は骨粗鬆症の原因として指摘されています。多くの人ははじめは気がつかず、健康診断の結果、カルシウム の骨密度の低いことが指摘され、後には腰痛などとして自覚するようになります。
骨と歯はカルシウムが主成分ですが、血液中にもカルシウムが含まれ、さまざま な生理作用に関係します。血液中のカルシウムが減少すると、すぐ骨から補給される仕組みで、誠に合理的ですが、カルシウムの補給を怠ると、いつの間にか骨がガランドウ(骨多孔症ー骨粗鬆症)になってしまいます。
最近は、病院に限らずヘルスクラブなどでも、簡単に骨密度を測れますから、どなたでも測定することをおすすめしましょう。もちろん、カルシウムは20代、30代に積極的に蓄積されますが、歳をとっても遅すぎません。あきらめずに消化吸収の良いカ ルシウムを摂ること、同時に多少とも運動を続け、日に当たることです。
一日中薄暗い家の中で横になっていては、発育盛りの子供でも、カルシウムは抜けています。日光に当たることで、皮膚の下のエルゴステリンはビタミンDに変化し、 カルシウムの吸収率を高めます。運動もまたカルシウムの骨への沈着をすすめるのです。牛乳・乳製品のカルシウム吸収率40~80%の差は、個々の食品の差というよ り、個々の人間の差と言った方がよさそうです。牛乳を一気に飲めない人、胃にもたれたり、おなかがゴロゴロする人などは、そうでない人に比べ、消化・吸収が悪いと 言えましょう。
歳をとると、胃腸が丈夫な人でも、下痢勝ち、便秘勝ちになる人が少なくありません。また、体臭や便の臭気が強くなったりしがちです。もちろん他の原因もありますが、先ずはお腹の調子をよくすること、そのためには乳酸菌を摂ることです。
牛乳を長く飲み続けていれば、大腸に乳酸菌が繁殖しますが、繁殖するまでに少し時間がかかります。即効性を望むなら、ヨーグルト、ケフィアやチーズにします。低カロリー食品を望んで、低脂肪のヨーグルト、ケフィアやカッテージチーズを召し上がる方が増えていますが、低カロリーと言うだけでなく、もっと根本的に健康増進のために、ヨーグルト、ケフィアやチーズを食べるべきでしょう。私は、小学生時代からチ ーズを食べて育ちました。昭和初期の頃で珍しいことで、この食習慣をつけてくれた 母に感謝しています。
数年前にケフィア菌をすすめられて以来、ずっとケフィアをつくり続け、毎朝300mlく らいいただくのです。その他に好きなチーズを時々。旅行に出ても、この習慣は変わりません。おかげで、骨密度だけは高く、骨折することもなく今に至っています。
主な食品のカルシウム含有量と吸収率
カルシウム (mg/100G) |
1回に (g) |
そのカルシウム (mg) |
吸収率 (%) |
吸収量 (mg) |
|
牛乳 | 100 | 200 (1カップ) |
200 | 40〜80 | 80〜160 |
ケフィア、ヨーグルト | 110〜130 | 300 (推奨量) |
330〜400 | 135〜200 | |
プロセスチーズ | 630 | 50 (2切れ) |
315 | 126〜252 |
|
スキムミルク | 1100〜1300 | 50 (大さじ4杯) |
275〜325 | 110〜260 | |
煮干し | 2200 | 25 (5尾) |
220 | (10)〜 20〜40 |
44〜88 |
さくらえび | 700 | 20 (大さじ2杯) |
140 | 28〜56 | |
ひじき | 1400 | 10 (小鉢1杯) |
140 | 28〜56 | |
あおのり | 840 | 2(1枚) | 16 | 3〜6 | |
小松菜 | 290 | 80 (小鉢1杯) |
230 | 46〜92 |