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委託研究 |
ホームメイド・ケフィア摂取における腸内菌叢および腐敗産物への効果 |
日本獣医畜産大学教授(現日本獣医生命科学大学) |
獣医学博士 寺田 厚 |
はじめに |
発酵乳、なかでもヨーグルトの整腸効果は特定保健用食品として指定されるなど広く認識されるようになってきたが、ケフィアに関してはこれまで報告がなかった。そこでこの度、中垣技術士事務所が販売している「ホームメイド・ケフィア」について、実際に人を対象とした投与試験を実施し、整腸効果を裏付けるデータが得られました。 |
試験方法 |
1、ホームメイド・ケフィアの調整 |
ケフィアは大学の研究室で発酵させました。ローゼルの高活性ケフィア菌1パックを牛乳(メグミルク)1リットルに加え、25℃の恒温器で24時間発酵させ、カード形成(牛乳が固まること)後、冷蔵庫に保存しました。 |
2、被験者(研究に協力していただいた方々) |
(ヘルシンキ宣言にもとずき)試験の主旨と方法についてよく説明し、日本獣医畜産大学の健康な学生8名(男性3人、女性5人、平均年齢27.3歳)の協力を得ました。 |
試験期間中は、他社のヨーグルトや乳酸菌飲料、オリゴ糖や食物繊維入りの食品や飲料、糖アルコール類を含む食品や飲料、納豆などの発酵食品、さらに、多量の飲酒を控えるなどの食事制限をお願いしましたが、その他には特別な制限をしないでふだん通りの生活をしていただきました。 |
3、試験期間 |
試験を始める前にホームメイド・ケフィアを摂取しない期間を1週間(摂取開始前)、ホームメイド・ケフィア摂取する期間を2週間(摂取1週後、摂取2週後)、その後にホームメイド・ケフィアを摂取しない期間を1週間(摂取休止後)をおいて、対照試験としてホームメイド・ケフィアの代わりに牛乳を摂取する試験も同様の期間実施しました。 |
被験者は朝食時にホームメイド・ケフィア300mlを摂取しました。 |
4、腸内細菌の検査 |
ホームメイド・ケフィア摂取による腸内細菌叢の変化は、糞便の細菌検査によって調べます。糞便の採取はそれぞれの試験期間の最終日に行い、採取した糞便は密閉できる容器に入れ、脱酸素剤で嫌気状態にし、保冷剤で低温に保って大学の研究室に持参し、3時間以内に検査を行いました。 |
細菌検査は、それぞれの非選択および選択培地を用いて平板培養し、出現したコロニーを同定しました。菌数は糞便1gあたりの常用対数で示しました。 なお、細菌数については統計処理(t-検定、X2検定)を行いました。 |
5、腸内腐敗産物および有機酸、pH、水分の測定 |
ホームメイド・ケフィアの摂取が腸内腐敗に対する影響を試験するために、糞便中の腐敗産物(アンモニア、硫化物、フェノール、p-クレゾール、エチルフェノール、インドール、スカトール)を測定しました。 |
さらに糞便中の酢酸、乳酸などの有機酸およびpH、水分の測定を行いました。 |
なお、腐敗産物、有機酸、pH、水分の測定値についても統計処理(t-検定)を行っています。 |
試験結果 |
1、ホームメイド・ケフィアの摂取が腸内細菌叢に与える影響 |
試験期間中の腸内細菌の変化を第1図に示します。 |
統計処理の結果、ホームメイド・ケフィア摂取2週目にビフィドバクテリウム属の菌数は、摂取前、摂取後および牛乳摂取に対して有意(p<0.05)に増加しています。また、ラクトバチルス属は摂取前に比べホームメイド・ケフィア摂取中増加傾向を示しました。 |
レシチナーゼ陽性クロストリジユム属の菌数は、ホームメイド・ケフィア摂取中には、摂取前、摂取後および牛乳摂取に対して有意(p<0.05)に減少しました。 |
2、糞便に含まれる有機酸 |
糞便中の有機酸の測定結果を第2図に示しました。 |
酢酸は摂取前、摂取後、牛乳摂取に比べ、ホームメイド・ケフィア摂取1週目(p<0.05)および2週目(p<0.01)にそれぞれ有意に増加しています。総有機酸、コハク酸および乳酸はホームメイド・ケフィアの摂取中に有意(p<0.05)に増加しました。プロピオン酸はホームメイド・ケフィア摂取2週間目に有意(p<0.05)に増加しました。 |
3、ホームメイド・ケフィアの摂取が腸内の腐敗産物に与える影響 |
腸内腐敗の状態を表す糞便中の腐敗産物を測定した結果を第3図に示します。 |
アンモニアは摂取前、摂取後、牛乳摂取に比べ、ホームメイド・ケフィア摂取2週目に有意(p<0.05)に減少しました。硫化物は、摂取前、摂取後、牛乳摂取に比べ、ホームメイド・ケフィア摂取1週目(p<0.05)および2週目(p<0.01)に有意に減少しました。フェノールおよびスカトールは、摂取前、摂取後、牛乳摂取に比べ、ホームメイド・ケフィア摂取中にそれぞれ(p<0.01)および(p<0.05)と有意に減少しています。クレゾールおよびインドールは摂取前、摂取後、牛乳摂取に比べ、ホームメイド・ケフィア摂取2週目に有意(p<0.05)に減少しました。 |
4、糞便のpHおよび水分 |
糞便のpHの測定結果を第4図に、水分の測定結果を第5図に示します。 |
pHは、摂取前、摂取後、牛乳摂取に比べ、ホームメイド・ケフィア摂取2週目に0.2低下しました。水分は、ホームメイド・ケフィア摂取中にわずかに増加しました。 |
試験結果の解説 |
ホームメイド・ケフィアには、乳酸菌としてラクトコッカス・ラクチス、ラクトコッカス・クレモリス、ラクトコッカス・ダイアセチラクチス、ロイコノストック・クレモリスの4種類の乳酸球菌とラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイの2種類の乳酸桿菌が含まれています。そのうち乳酸桿菌は腸に達する乳酸菌で小腸上部において侵入してきた感染菌から防御しています。試験結果に示すように、ホームメイド・ケフィアの摂取によって乳酸桿菌(ラクトバチルス属)が増加しています。第6図に乳酸桿菌のみを図示しましたが、これをみると牛乳摂取に比べ、ホームメイド・ケフィア摂取で明らかに乳酸桿菌が増加していますので、この試験結果はホームメイド・ケフィアの乳酸桿菌が腸に達したことを示しています。菌数の単位が常用対数でわかりにくいと思いますが、対数値が1上がるごとに10倍になります。従って、ホームメイド・ケフィアの摂取前に対数値6、摂取2週間後に対数値8になっているということは、摂取前に比べ摂取2週間後には約100倍に増加したことを示しています。 |
次に、大腸において宿主の体を守っている腸内の善玉菌の代表といわれるビフィズス菌はどうでしょうか。ホームメイド・ケフィア摂取と牛乳摂取を対比して第7図に示します。 |
第7図をみると、ホームメイド・ケフィア摂取によってビフィズス菌(ビフィドバクテリウム属)が増加しています。このことは試験結果のところでも述べましたように統計的にも明らかでした。ビフィズス菌は本来人の腸内に存在している菌です。ホームメイド・ケフィアにはビフィズス菌を含んでいませんが、ホームメイド・ケフィア摂取によって、もともと人の腸内に存在するビフィズス菌を増加させることがわかりました。病気になったり老化によって腸内のビフィズス菌が減少しますので、腸内細菌叢に占めるビフィズス菌の割合が腸年齢を表わすといわれ、健康状態を示すバロメーターになっています。 |
第8図にホームメイド・ケフィアの摂取によって腸内細菌のバランスが変化する状態を示しました。 |
第8図 ホームメイド・ケフィアによる腸内のビフィズス菌の増加 |
赤ビフィズス菌 バクテロイデス菌 その他 |
ホームメイド・ケフィア摂取開始前 牛乳摂取開始前 |
ホームメイド・ケフィア摂取1週間後 牛乳摂取1週間後 |
ホームメイド・ケフィア摂取2週間後 牛乳摂取2週間後 |
ホームメイド・ケフィア摂取休止後 牛乳摂取休止後 |
ホームメイド・ケフィア摂取1週間目で18%、摂取2週間目で28%とビフィズス菌の占拠率が高まります。ケフィアを摂取すると腸年齢が若返ることがわかりました。ちなみにバクテロイデス菌は腸内の最優勢菌であり、いわゆる日和見菌と呼ばれ、ふだんはおとなしくしていますが、免疫が落ちるといたずらをはじめる菌です。これまでの結果により、ホームメイド・ケフィア摂取によって腸内の善玉菌を増やすことが明らかになりましたが、悪玉菌の方はどうでしょうか。第1図にレシチナーゼ陽性クロストリジウム属が示されていますが、レシチナーゼ試験はほとんどクロストリジウム・パーフリジェンスという菌の検出のために行われている試験です。このクロストリジウム・パーフリジェンスは発見者の名にちなんでウェルシュ菌と呼ばれ、食中毒の原因菌として腸内の悪玉菌の代表格です。 |
第9図に、この悪玉菌がホームメイド・ケフィアの摂取によってどう変化するかを示しました。 |
第9図をみるとホームメイド・ケフィアの摂取はウエルシュ菌(レシチナーゼ陽性クロストリジウム菌)を減少させることが明らかです。試験結果のところでもでも述べましたように、これは統計処理によって証明されています。 |
では、腸内の善玉菌が増え、悪玉菌が減少すると腸内でどんな変化が起きているのかを見てみましょう。第2図に腸内の有機酸の変化を図示しましたが、乳酸と酢酸についてホームメイド・ケフィア摂取と牛乳摂取を対比して、第10図、第11図に示します。 |
第10図をみると、乳酸はホームメイド・ケフィアの摂取によって明らかに増加しています。これは腸内に達した乳酸桿菌が生きていることを示しています。 |
第11図を見ると、酢酸もまたホームメイド・ケフィアの摂取によって明らかに増加していますが、これはビフィズス菌の増加によるものです。 |
第3図でもホームメイド・ケフィアの摂取によって腸内の総有機酸が明らかに増加していましたし、第4図に示した腸内のpHもホームメイド・ケフィアの摂取によって明らかに低下しています。 |
このように、腸内で有機酸が増え、pHが低下することによって、悪玉菌の増殖を抑え、腸内腐敗を抑制できます。腸内の腐敗産物生成の抑制について第3図に示しましたが、次に代表的な腐敗産物であるアンモニアと硫化物について第12図、第13図に示します。 |
第12図をみると、ホームメイド・ケフィアの摂取は、腸内でアンモニア生成を抑制していることは明らかです。 |
また、第13図からホームメイド・ケフィアの摂取は、腸内の硫化物生成を抑制していることがよくわかります。 |
代表的なこの2つの腐敗産物の他にも、試験結果のところで述べましたように、フェノール、クレゾール、インドール、スカトールなどの腐敗産物の減少は、統計的にも実証されました。 |
これらの腐敗産物が少ないことは、糞便やおならの臭いが少なくなるばかりでなく、腐敗産物の腸内から体内への吸収が少なくなり、肝臓障害や発ガンの抑制、また肌荒れ、肩こり、めまい、体臭、口臭などを抑制する効果があるものと推察されます。 |
ホームメイド・ケフィア摂取中は、排便回数、糞便の色、形状は正常を保ち、糞便水分の増加がわずかであったにもかかわらず、被験者、特に女性において便秘が改善される傾向がみられました。 |
まとめ |
ホームメイド・ケフィアの摂取によって、腸内細菌叢のバランスを改善できた。すなわち、ビフィズス菌や乳酸桿菌などの腸内の善玉菌を増加させ、ウェルシュ菌などの悪玉菌を減少させる効果が実証された。その効果はホームメイド・ケフィアの摂取前および牛乳摂取に比べ顕著であった。善玉菌の増加によって乳酸や酢酸が生成されて、腸内のpHが下がり、アンモニアや硫化物、p-クレゾール、インドールなどの腸内腐敗産物の生成を抑制できた。 |
【研究者略歴】 |
昭和16年生まれ、日本獣医畜産大学大学院修士課程終了、日本獣医畜産大学にて獣医学博士取得、日本獣医畜産大学獣医畜産学部助教授を経て、同大学畜産食品工学科食品衛生学教室教授、現在に至る。その間ロンドン医科大学留学、大連医科大学客員教授を歴任。 |
主な研究分野:機能性食品の腸内フローラおよび腸内腐敗産物に及ぼす影響、 |
主な著書:食品衛生学(分担)朝倉書店、食肉、肉製品の科学(分担)学窓社、腸内細菌学(分担)朝倉書店 |
ケフィアニュース Volume 11. Number 1. (July 1. 2004 )より転載 |