Volume 28.Number 1(Febrary 1.2021)
1991年10月に京都の国際会議場で開催された日本栄養士会全国大会の会場でホームメイド・ケフィアを初めて販売しました。会期中休憩時間に多くの栄養士の先生方が列をなして買っていただいたことを懐かしく思い出します。爾来30年間、営業努力もさりながら、今日多くのケフィアファンが出来ましたのは、ケフィア菌の商品力に負うところが大きかったと思います。それは、1)室温で発酵できたこと、2)酵母が生きていること、3)効果が体感しやすかったことです。
もしヨーグルトであったら発酵器が無ければ発酵できないので、ケフィアほど普及しなかったことであろうし、酵母の作る炭酸ガスによって容器が膨満するためにス-パーなどの店舗で販売していなかったことが、自分しか知らないケフィアを知人に紹介したくなり、ファンがファンを呼ぶことになりました。酵母と乳酸菌の共生によって作るケフィアの美味しさに馴染むと、スーパーでヨーグルトを買わなくなったというファンも多くいます。「便通が改善した」、「風邪をひかなくなった」などの個人的体験もよく聞きました。創業に際してホームメイド・ケフィアを発売できたことは幸運でした。
どれを選んだら良いのか、それぞれの特徴を簡単に説明します。
2009年10月にブルガリアのプロバイオティクス・ヨーグルト“GBN1”を発売。
2013年12月に発売した有機アロニア100%果汁は、豊富なポリフェノールを含有するために強い渋味を感じますが、ケフィアやヨーグルトにトッピングすると渋味が消えて美味しくなります。アロニア果汁は抗酸化力が高く動脈硬化を防ぐ効果があり、腸管の健康を守る発酵乳と血管の健康を守るアロニア果汁の組み合わせは、最強の健康法になります。
2019年11月にフィンランドの伝統的発酵乳ホームメイド・ヴィーリを発売して、世界の三大発酵乳の品揃えが出来ました。
世界の発酵乳を家庭で作るLactic Starter Culture専門店として、皆様の健康に奉仕することを社是とし、研鑽を重ねて参ります。
今後ともよろしくご愛顧賜りますようお願い申し上げます。
有限会社中垣技術士事務所
代表取締役 中垣剛典
人の腸内で健康に役立つ細菌をプロバイオティクスと言い、ビフィズス菌や乳酸菌はプロバイオティクスの代表です。ホームメイド・ケフィアに含まれる6種類の乳酸菌のうち、ラクトバチルス・カゼイとラクトバチルス・プランタラムの2種類の乳酸菌は、胃酸や胆汁酸に耐性があり、生きて腸に達して善玉菌として働くプロバイオティクスです。
ラクトコッカス・ラクチス、ラクトコッカス・クレモリス、ラクトコッカス・ダイアセチラクチス、ロイコノストック・クレモリスの4種類の乳酸菌は、胃酸や胆汁酸によって死滅しますが、死菌になってもその細胞壁が免疫を高める効果があります。
プロバイオティクスの増殖に役立つ食物をプレバイオティクスと言います。ホームメイド・ケフィアにはビフィズス菌は含まれていませんが、ケフィアを食べると腸内にその人が本来持っているビフィズス菌を増やす効果がありますので、ケフィアはプレバイオティクスです。
そしてもうひとつ、発酵生産物が健康に役立つことをバイオジェニックスと言います。ケフィアのバイオジェニックスに関する新しい研究論文が発表されましたので紹介します。
論文タイトル
スターターカルチャーまたはケフィアグレインで発酵した牛乳ケフィアのペプチドプロファイルは、発酵中にカゼインから236種類のペプチドが生じたことを明らかにしました(※)
この論文は2015年にドイツのライプニッツ大学の研究者により発表されました。
Ⅰ)ペプチドについて
タンパク質は第1図の様にアミノ酸が連なって出来ています。タンパク質を構成している20種類のアミノ酸を標準アミノ酸と言います。
アミノ酸とアミノ酸の結合をペプチド結合と言い、タンパク質はアミノ酸が50個以上ペプチド結合した高分子物質(ポリペプチド)です。
タンパク質のペプチド結合がタンパク質分解酵素によって切断されてペプチドを生じます。アミノ酸が2個以上繋がったものをペプチドと総称します。
ペプチド結合の切られ方によって様々なペプチドが生じます。ケフィアは発酵する乳酸菌の種類が多いので、タンパク質分解酵素の種類も多く、ペプチド結合を切る位置も様々ですから、多様なペプチドを生じる可能性があります。
ペプチドのアミノ酸の並びをアミノ酸配列と言います。
Ⅱ)ケフィア発酵によって生じたペプチド
牛乳に含まれるたんぱく質の80%はカゼインです。ケフィア発酵中に乳酸菌のタンパク質分解酵素によってカゼインのペプチド結合が切断されペプチドが生じます。
著者らは最新の分析機器を駆使して、ケフィアの発酵によってカゼインから生じたペプチドを包括的に分析しました。
第2表に著者らの分析したケフィアのペプチドプロファイルを示します。著者らはアミノ酸の1文字コードによって、ペプチドのアミノ酸配列を表示しています。
第2表を見ると、スターターカルチャーケフィア(Starter culture kefir:スターターカルチャーによって発酵したケフィア)には230種類のペプチドを検出、ケフィアグレインケフィア(Kefir grain kefir:ケフィアグレインによって発酵したケフィア)には124種類のペプチドが検出されています。両方のケフィアには合わせて257種類のペプチドが検出され、そのうち牛乳中にも存在したペプチドは21種類です。したがって236種類のペプチドはケフィアに固有のペプチドです。
第11図に見る通りフレーバーヴィーリには、カビもバター層もありませんでした。フレーバーヴィーリはパッケージに描かれているフルーツの香りがします。チョコレート風味のヴィーリなど珍しいフレーバーのヴィーリもありました。
第2表から、ケフィアグレインに比べ、スターターカルチャーは高いタンパク質分解活性を持ち、より多くのペプチドを生じていることがわかります。
Ⅲ)生理活性ペプチド
著者らは、検出されたケフィアペプチドのアミノ酸配列と既知の生理活性ペプチドのアミノ酸配列と照合するために詳細な文献調査を行いました。その結果を第3図に示します。
第3図を見ると、血圧を上げる酵素(ACE:アンジオテンシン変換酵素)を阻害して血圧の上昇を防ぐACE阻害ペプチドが12種類も特定されています。
VLNENLLRとYQEPVLGPVRGPFPIIVは、それぞれ抗菌活性を持つガゼイシンB、ガゼイシン17と特定されました。
免疫を調節するペプチドも2種類特定できました。
VYPFPGPIPNは、痛みを和らげ気持を安らげるオピオイドペプチドと特定されました。
KIEKFQSEEQQQTは、カルシウム吸収を促進し骨を強くするカルシウム結合ペプチドと特定されました。
さらに抗酸化活性を持つ3種類のケフィアペプチドと、1種類の抗血栓ペプチドも特定されました。
生理活性が特定されたペプチドのうち、次の2つは特に重要です。
1つは、ガゼイシン17(YQEPVLGPVRGPFPIIV)です。このペプチドは抗菌作用、ACE阻害作用、抗酸化作用、抗血栓作用を発揮する多機能ペプチドで、量的にも豊富であることから、ケフィアの健康効果のために重要なペプチドです。
もう1つはVYPFPGPIPNです。このペプチドもACE阻害、抗酸化、オピオイド活性を示す多機能ペプチドです。
検出されたほとんどのケフィアペプチドはまだ生理活性を特定されていませんが、今後の研究によってペプチドデータベースが更新されると、さらに多くの生理活性ペプチドが特定される可能性があります。
筆者私見
この論文によって、ケフィアには健康増進機能を持ったペプチドが豊富に含まれていることがわかりました。血圧の上昇を防ぐペプチド、心筋梗塞や脳梗塞を防ぐ可能性をもつ抗血栓ペプチド、免疫を調整するペプチド、骨を強くするペプチド、酸化ストレスから健康をまもる抗酸化ペプチド、感染症を予防する抗菌ペプチド、痛みを和らげるオピオイドペプチド等々、ケフィアの効能は多くの生理活性を持ったペプチドが総合的に健康をまもる働きをしていることがわかりました。ケフィアを発酵する乳酸菌の種類が多いためにタンパク質分解酵素の種類も多く、発酵中に生じるペプチドも多種多様であることがケフィアの健康価値を高めています。今後の研究によってさらにペプチドの生理活性の解明が進むと、ケフィアの健康価値もさらに高まることでしょう。
タンパク質は高分子物質でありそれ自体に味がありません。タンパク質分解酵素により低分子のペプチドが生じて味覚を刺激し味を感じます。ケフィアグレインケフィアよりスターターカルチャーケフィアが美味しいのは、ケフィアグレインからタンパク質分解活性の高い乳酸菌を選んでケフィアスターターカルチャーを開発しているためです。
註)この研究に用いられたスターターカルチャーはオランダの会社のスターターカルチャーであり、ホームメイド・ケフィアではありません。現在、弊社でもホームメイド・ケフィアで発酵したケフィアのペプチド解析を計画しています。
参考文献
(※)Peptides profiling of bovine kefir reveals 236 unique peptides released from caseins during its production by starter culture or kefir grains.
Jennifer Ebner, Ayşe Aşçı Arslan, Maria Fedorova, Ralf Hoffmann,Ahmet Küçükçetin, Monika Pischetsrieder.,Jounal of proteomics 117 (2015) 41-57.。
------ホームメイド・ヴィーリの発酵温度について-----
ヴィーリは強い粘りを特徴とするスカンジナビア地方の伝統的発酵乳です。ヴィーリの強い粘りはヴィーリを発酵する乳酸菌ラクトコッカス・クレモリス(以下クレモリス菌と記載)のつくる食物繊維(菌体外多糖:Exopolysaccharide以下EPSと記載)によります。
クレモリス菌はなぜEPSをつくるのだろうか?粘質多糖類で細胞を覆うことによって、過酷なスカンジナビア地方の環境に耐えて生命を維持してきたためであると考えられます。
昨年、北欧生まれのヴィーリが初めて日本の夏を経験しましたが、数名のお客様から夏になって粘らなくなったというご指摘がありました。
ホームメイド・ヴィーリの発売に当たっては何回も発酵テストを行って、室温で発酵できることを確認していましたが、室温を冬は暖房をした部屋、夏は冷房をした部屋の温度と想定していました。これはホームメイド・ケフィアの発酵も同じです。したがって冬季暖房のない部屋で発酵させるときはケフィアサポーターの使用をお勧めしています。ケフィアはこれで四季を通じて一様に発酵できますので、ヴィーリも同様に考えていましたが、夏季に冷房のない部屋でヴィーリを発酵させると、カードが出来る(牛乳が固まる)が粘らない(EPSを作らない)ということは想定外でした。
それでヴィーリの発酵温度と粘りの強さの関係を確認するために、発酵したヴィーリをピペットで吸い上げ、9g(滴定酸度のサンプリング量)が流下する時間(秒)を測定しました。粘りが強いほど流下時間が長くなります。
牛乳1リットルにホームメイド・ヴィーリ1パックを加え、22.5℃、30℃、38℃で24時間発酵させたヴィーリを検体としました。第1図に見ると、発酵温度が低いほど粘りが強く(流下時間が長く)、発酵温度が高くなるにつれ粘りが少なくなりますが、30℃までは粘りがあります。しかし38℃で発酵するとほとんど粘りが無くなることがわかりました。
同じ検体を用いてEPSの定量を行いました。
第2図に牛乳1リットルで発酵させたヴィーリのEPS生成量を示します。EPSの生成量は、22.5℃で発酵すると1リットル当たり84 mg、30℃で発酵させると64 mgでした。30℃で発酵すると22.5℃で発酵させた場合の約80%のEPSを生成しています。ところが38℃で発酵させるとEPSの生成量は24 mgになりました。22.5℃で発酵させた場合に比べEPSの生成量は約30%に下がります。この結果からヴィーリの発酵は30℃以下の温度で発酵させなければならないことがわかりました。
第2図に見る発酵温度によるEPSの生成量の低下に比べ、第1図の粘度の低下傾向が大きいように見えますが、それはEPSの縺れた繊維状の分子構造(第3図)によるのでないか、つまりEPSがある濃度以上に蓄積すると極端に粘度が高くなるのでないかと考えています。
第4図を見ると、乳酸生成量はEPS生成量の様に発酵温度が高くなると低下するようなことはなく、ほぼ同じ量の乳酸を生成しています。
全ての生物の生命活動は酵素反応によるものですが、乳酸菌による乳酸発酵も乳糖をグルコースとガラクトースに分解する酵素、さらにグルコースを乳酸に酸化する酵素の働きによるものです。同様に乳糖を分解して生じたガラクトースを繊維状に繋げてEPSを生成する反応も酵素の働きによるものです。
それぞれの酵素反応には反応しやすい温度すなわち至適温度があります。クレモリス菌の乳酸発酵の至適温度は20~30℃ですが、第2図を見るとEPSを生成する酵素の至適温度は乳酸発酵のそれに比べて低いことがわかります。前述のとおり過酷なスカンジナビア地方の環境に耐えて生命を維持するためのEPSを生成する酵素は低温で働くように環境に順応してきたのであろう。従って、粘りの強いヴィーリを発酵させるためには、低い温度に置く必要があります。
従来、発酵乳の発酵器はケフィアサポーターやヨーグルティアYM-1200などがそうであるように、寒い季節に発酵しやすくする器具として開発してきました。しかしヴィーリは暑い季節に発酵しやすいように温度を下げる発酵器を開発しなければなりません。
種々検討した結果、-9℃から60℃まで自由に温度設定が出来るベルソス冷温庫がこの目的に適っていることがわかりました。
食物繊維が豊富な、粘りの強いヴィーリの発酵方法
●ヴィーリの発酵適温は20~30℃ですが、低い温度を好みます。
●室温が30℃を超える夏季には、ベルソス冷温庫を22℃に設定して発酵させてください。
●室温が20℃以下に下がる冬季は、ケフィアサポーターまたはヨーグルティアYM-1200を使用してください。
有限会社中垣技術士事務所
研究所長 山根拓也
生活習慣の欧米化に伴って心筋梗塞や狭心症といった病気が年々増加しています。このような病気の大部分は「動脈硬化」が原因で起こることが知られています。動脈硬化とは病気の名前ではなく動脈の壁が硬くなったり、厚くなったりして働きが悪くなる変化のことを表しています。血管がこのような状態になる原因として高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、糖尿病といった5つの危険因子が挙げられます。これらの危険因子を1つでも減らすことが出来れば、動脈硬化の予防につながり心臓・血管系の病気の発症を抑制することが可能となると考えられます。このような予防を持続的に行なうには、食品摂取によるのが最も現実的でしょう。これまでの研究でアロニア果汁に含まれるシアニジン 3,5-ジグルコシドがジペプチジルペプチダーゼIVを、カフェオイルキナ酸がα-グルコシダーゼを阻害することで血糖値上昇を抑制する効果があることを明らかにしてきました。さらなる研究の結果、高脂血症、肥満、高血圧などにも抑制効果があることが分かってきました。これらの結果は動脈硬化を引き起こす5つの危険因子の中の喫煙以外の因子について、アロニア果汁摂取が予防効果を発揮する可能性を示唆しています。
肥満予防効果
アロニア果汁を普通のマウスと2型糖尿病・肥満モデルマウス(以下KKAyマウスと記載)に摂取させると、どちらのマウスも餌を食べる量が減ります。特にKKAyマウスは大きく減ることが明らかとなりました。
また、アロニア果汁を摂取したKKAyマウスの体重は、下図のように減少しました。
さらに高脂肪食を摂取したマウスではフィルミクテス門に属する腸内細菌(以下デブ菌と記載)が増加し、バクテロイデス門に属する腸内細菌(以下ヤセ菌と記載)が減少しています。これは肥満の典型的な腸内細菌叢をあらわしています。そこにアロニア果汁を摂取させるとデブ菌が減少し、ヤセ菌が増加します。このようにアロニアを摂取することによって過食が減るだけではなく、腸内細菌叢のバランスを整えることで肥満を予防できる可能性が出てきました。
脂肪蓄積抑制効果
次にアロニアによる脂肪蓄積抑制効果について紹介します。アロニア果汁を摂取したKKAyマウスでは、下図に示すように内臓脂肪や皮下脂肪が減少することが明らかとなりました[1]。
その内臓脂肪を構成している脂肪細胞を顕微鏡で観察してみるとアロニア果汁を飲んだマウスでは、下図のように脂肪細胞の大きさが縮小していることが判明しました[2]。
脂質代謝異常改善効果
次に脂質代謝異常改善効果についてご紹介します。高脂肪食を摂取したマウスにアロニア果汁を摂取させて血中中性脂肪とコレステロール濃度がどのように変化するかを検討しました。その結果、血中中性脂肪やLDL-コレステロール濃度がアロニア果汁摂取によって減少することが判明しました[3]。
さらにアロニア果汁には、肝臓においてコレステロールを合成する酵素(以下HMG-CoA還元酵素と記載)を阻害する物質が含まれていることが明らかとなりました [4] 。
肝臓でコレステロールが合成される速度はHMG-CoA還元酵素によって調節されています。また、アロニア果汁に含まれるHMG-CoA還元酵素の阻害物質はペチュニジン配糖体とデルフィニジン配糖体であることが明らかになりました。肝臓でのコレステロール合成が抑制されると、肝臓へのLDLコレステロールの取り込みが増えるため、血中LDLコレステロール値が低下します。
高血圧改善効果
次にアロニアによる高血圧改善効果について紹介します[5]。高血圧は様々な病気の原因になります。たとえば、脳では脳出血や脳梗塞、心臓では心肥大、心不全、狭心症、心筋梗塞、腎臓では腎硬化症、腎不全などが起こります。したがって高血圧を予防することも非常に重要です。アロニア果汁摂取による血圧上昇抑制効果がヒトを対象とした臨床試験において証明されています。ポーランドの研究グループは2007年に高血圧患者にアロニア果汁に含まれるアントシアニンを服用させると高血圧が改善されることを報告しています。さらに、2015年にノルウェーの研究グループが高血圧患者にアロニア果汁を飲用させることで高血圧が改善されることを報告しています。私たちの研究でも高血圧発症モデルラットを用いて28日間のアロニア果汁摂取による血圧上昇抑制作用が見られるか試験を行いました。その結果、摂取28日目において有意に血圧の上昇が抑制されることが明らかとなりました[5]。
上図に血圧調節の仕組みを示します。血圧上昇は主にこのアンジオテンシンIIというペプチドによって行われています。アンジオテンシンIIは交感神経の活性化や副腎皮質からのアルドステロンの分泌、細動脈血管収縮、脳下垂体後葉からの抗利尿ホルモン・バソプレッシンの分泌による腎集合管における水の再吸収促進を介して血圧を調節しています。アンジオテンシンIIはアンジオテンシンIをアンジオテンシン変換酵素(以下ACEと記載)が切断することによって産生されるため、この酵素を阻害すると血圧の上昇が抑制できます。そこでアロニア果汁にもACEを阻害する物質が含まれているのではないかと考えました。実際にアロニアを摂取した高血圧発症モデルラットの腎臓においてACE活性が阻害されていることが明らかになりました。この結果は、アロニアにはACEを阻害する物質が含まれていることを示唆しています。
参考文献
【編集後記】
新型コロナCOVID-19のパンデミックによって、世界はウイルスの恐怖にさらされました。ワクチンが待たれるところです。しかしウイルスは変異します。私たちはこのウイルスと長い付き合いになるかもしれません。次に来る危険に備えて、抵抗力をつけておかなければならない。免疫を高める効果が期待できる発酵乳の摂取をお勧めします。
発酵乳は何千年にわたって人類の健康を支えてきた歴史があります。本号で紹介したドイツの論文によるとケフィアは多数の生理活性ペプチドを含有し、様々な健康維持機能を持つことがわかります。長い歴史を持った発酵乳の機能が解明されつつあります。
弊社の研究によってアロニア果汁にも動脈硬化、高血圧、糖尿病の予防等々複数の機能があることはわかりました。食品の機能成分はひとつ一つの効果が弱いかもしれませんが、多数の機能成分が複合的に作用して健康維持機能を発揮しています。今後食品成分の機能の解明が更に進むと考えられます。その成果の普及に努め、皆様の健康維持に役立てていただくことを小誌発行の目的と考えています。
(編集子 中垣剛典)
Volume 28 Number 1 (February 1. 2021)
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