ケフィアニュース

Volume 23.Number 1(February 1.2016)

記事抜粋

アロニア果汁に高血糖を抑える成分を発見!!

北海道文教大学健康栄養学科 講師

小塚美由記 修士(教育学)

インクレチンとジペプチジルペプチダーゼⅣ

消化管から分泌されるグルコース依存性インシュリノトロピックポリペプチド(GIP)やグルカゴン様ペプチド‐1(GLP-1)といったホルモンはインクレチンと呼ばれ、これらのホルモンは血糖値を下げる働きを持つインシュリンの膵臓からの分泌を促進することが知られています。ところがジペプチジルペプチダーゼIV(DPP Ⅳ)はGIPやGLP-1のようなインクレチンのN末端領域を切断する機能を持っています。DPP Ⅳによるインクレチンの切断は血糖値の上昇を抑制するインシュリン分泌の減少を引き起こします(図1)。

DPP Ⅳ阻害物質は糖尿病患者の血糖値改善効果があることが分かっており、低血糖などの副作用がほとんど無いことから、現在までに9種類のDPP-Ⅳ阻害物質が2型糖尿病治療薬として使用されており、その効果を発揮しています。

最近、私たちはアロニア果汁に高血糖を抑える成分があることを発見し、その成分がDPP Ⅳ阻害物質であることを見出しました[4][5]。その研究内容についてご紹介いたします。

アロニア果汁からDPP Ⅳ阻害物質を同定

アロニア果汁は、中垣技術士事務所からご提供いただいたブルガリア産有機アロニア100%果汁を使用しました。DPP Ⅳはブタ精漿から精製しました。その他の試薬は全て分析グレードのものを使用しました。また、プロテアーゼ活性測定はDPP Ⅳによる切断が起こった時に蛍光が出る基質を使って、その強度を測定することにより酵素活性を決定しました。さらにDPP Ⅳ阻害物質の抽出と同定については、アロニア果汁中でDPP Ⅳ阻害の強いところを集めたあと、その集めた溶液を以前の研究で確立された質量分析法により測定し、どのような物質が主に含まれているかを調べました。その結果、以下のようなことが分かってきました。

(1)アロニア果汁には高血糖を抑制するDPP Ⅳ阻害物質が含まれている

アロニア果汁の中に含まれるDPP Ⅳ阻害の強い部分を集めてみると、図2に示すような赤色の溶液が得られました。アロニア果汁中に含まれるDPP Ⅳ阻害物質はこの赤色の溶液に含まれることが分かりました。また、その赤色溶液のDPP Ⅳ阻害活性は81%でした。

(2)アロニア果汁に含まれるDPP-Ⅳ阻害物質の単離・同定

図2で集めたDPP-Ⅳ阻害活性を持つ赤色の溶液を分析したところ、主成分としてシアニジン 3,5-ジグルコシドを含んでいることが明らかとなりました(図3)。

以上の結果から、アロニア果汁はDPP Ⅳ阻害活性を有することが明らかとなりました。DPP Ⅳ阻害物質は食品や食品に含まれるタンパク質分解物中で以前に見出されていて、シアニジン、シアニジン 3-グルコシド、マルビジン、ルテオリン、アピゲニン、ケルセチン、ケンペロール、へスペレチン、ナリンゲニン、エリオシトリン、ゲニステイン、レスベラトロール、没食子酸、カフェイン酸はベリーやシトラスフルーツに含まれるDPP Ⅳ阻害物質として報告されています。私たちはアロニア果汁中にDPP Ⅳ阻害物質としてシアニジン3,5-ジグルコシドを同定できたので、アロニア果汁の抗糖尿病効果はこのシアニジン3,5-ジグルコシドよるものであろうと考えています。

図4に、アロニア果汁に含まれるシアニジン3,5-グルコシドがDPP-Ⅳのインクレチン分解を阻害して、インシュリンの分泌を促し血糖値の上昇を抑制するメカニズムの想定図を示します。

Volume 23 Number 1 (February 1. 2016)
タイトルをクリックして全文を読むことが出来ます。