Volume 21.Number 1(February 1.2014)
記事抜粋
----(私の食事療法)----
有限会社中垣技術士事務所
代表取締役 中垣剛典
はじめに
いささか旧聞になりますが、2008年3月18日の日経新聞の夕刊に、次のような記事が載りました。
『カロリー制限が中心だった糖尿病の食事療法に“新顔”が登場した。炭水化物だけを減らして血糖値の上昇を防ぐ。コメやパンなどの主食を控えるほかは大きな制約がなく、患者も続けやすい。
フランス料理のシェフだった河合勝幸さん(67)は38歳のときに糖尿病と診断された。日ごろから高カロリーの食事を口にすることが多く、身長175センチで体重は110キロあった。
仕事をやめ、のんびり暮らそうとスペインに渡った。そこで出会った食事療法は日本と大きく違っていた。
日本の食事療法は今でも総摂取カロリーの制限が一般的。さらにカロリー比で炭水化物が55-60%、タンパク質20%、脂肪分20-25%を目安にする。スペインでは、血糖値を上げないことに重点が置かれていた。卵やチーズは普通に食べてよく、オリーブオイルを使った魚介類料理も問題ないという。
体重は80キロを切るまでに減り、血糖値を下げるインスリン注射も不要になった。その後、欧州だけでなく米国でも、炭水化物の制限食が主流だと知り、帰国してからは欧米流の食事療法の啓蒙に力を入れている。
「糖尿病にかかった場合、一番重要なのは血糖値をむやみに上げないことだ」と大阪市立大学の川村智行講師は強調する。炭水化物を摂ると食後30分以内に血糖値が跳ね上がる。炭水化物はほぼ 100%が糖に変わるが、タンパク質は 50%、脂肪は 10%未満。血糖値を上げるスピードも穏やかだ。
炭水化物を減らせば、食後の血糖値の上昇をコントロールできる。パンを半分、ご飯を半分といったように、どれだけ減らすと効果があるのか患者も把握しやすい。
大阪市立大病院は2002年、子供に多いⅠ型糖尿病の治療に炭水化物の制限食を導入した。成長期にカロリー制限をするのはよくないと考えたからだ。肉や脂肪は健康な子どもと同様に食べられるようになり、インスリン注射の量を減らすなどの効果を上げている。
生活習慣病であるⅡ型糖尿病にも効果があると期待されている。米糖尿病学会は昨年、Ⅱ型糖尿病の治療に炭水化物制限食を導入すべきだという指針をまとめた。川村講師は「欧米では炭水化物の管理が食事療法として定着している」と話す。
血糖値が高いと血管壁のタンパク質が血液中のブドウ糖とくっついて、じわじわと壁がもろくなる。これが脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすとされる。炭水化物を減らす食事療法は生活習慣病に伴うリスクを減らす効果もある。』※1)
私はブログ(ホームメイド・ケフィアの愛好者のためのブログ)で、この記事を紹介し、次のように述べました。
「ところで上のグラフをご覧ください。牛乳は他の食品と比べて炭水化物が少ないことがわかります。いささか我田引水になりますが、牛乳を発酵させて作るホームメイド・ケフィアは糖尿病の治療食として適しているように思います。ご飯をやめてケフィアを主食にしませんか」。
ブログを読んだホームメイド・ケフィアの愛好者から「ケフィアのおかげで糖尿病を克服できた」という電話やメールを何通も戴きました。
ブログの反響に気をよくした私は、ご飯をやめてケフィアを食べると血糖値が下がることを確かめたいと思いましたが、当時の私は血糖値もヘモグロビンA1cの値も正常値でしたので、私自身で実証することはできませんでした。それで知人から著名な糖尿病専門医を紹介していただき、糖尿病患者を対象として実証実験を計画しましたが、膨大な研究費が必要とわかり実現できませんでした。
過食、運動不足が原因で糖尿病の初期症状
年齢が70歳を超えても私の食欲は旺盛で、そのうえ毎日帰宅が遅く夕食が10時過ぎになるなど、就寝前の過食が続いていました。また、愛犬が老衰死して毎朝行っていた犬の散歩をしなくなったことや、外出は車ばかりで歩かなくなったことなど運動不足でした。
かかりつけの内科医院で定期的に健康診断をしているのですが、一昨年の9月に「糖尿病です、薬を出しましょうか」と診断されました。ブログで「ご飯をやめて、ケフィアを主食に!」と言ってきたので、薬を処方してもらうわけにはいきません。薬を断って自説を確かめることにしました。
お医者さんから「それでは2ヶ月に1回、ヘモグロビンA1cを測りましょう」といわれ、私の食事療法が始まりました。
私の食事療法
「ご飯をやめて、ケフィアを主食に!」ということは「ご飯を毎日食べるのをやめて、ケフィアを毎日食べる」ということです。私の食事療法の基本は、炭水化物制限食です。朝食のパン、夕食のご飯をやめ、昼食は雑穀ご飯にしました。そして、米飯とパン食の炭水化物を主とした食事から、肉、魚、卵、大豆などタンパク質を主とした食事にし、野菜を多く食べることにしました。
私の食事の特徴は、ケフィアとアロニアです。
牛乳はそれだけで仔牛が育つようにバランスよく栄養成分を含有しています。しかし日本人の成人には乳糖不耐症といって牛乳の栄養成分を利用できない人が多いのですが、牛乳をケフィア菌で乳酸発酵させることにより栄養成分が消化吸収しやすくなります。ケフィアを毎日食べることによって、ダイエットや食事療養中にありがちな栄養の偏りを防げます。さらに乳酸菌の働きによって、腸を元気にし、免疫を高める効果が期待できます。
アロニアは、ロシアやブルガリアなどの東欧諸国で高脂血症や糖尿病などの治療に利用されているという研究論文が多数報告されており、私が糖尿病の初期症状と診断されたちょうどその時期に、ブルガリアからアロニア果汁の輸入を始めましたので、アロニアの効果を確かめるために私が絶好の被験者になりました。
朝食
朝食の主役は、ケフィアです。大きめのマグカップにいっぱいケフィアを入れて、計量カップで測ったアロニア果汁50mlを加え、アロニアケフィアドリンクにします。アロニア果汁は渋みがありますが、ケフィアに混ぜると渋味が消えて美味しくなります。
下の写真に見るように、朝食では野菜を多く摂るようにしています。私は歯があまりよくなくて生野菜のサラダはあまり好きではなかったのですが、妻が“スリッシュ”の蒸し鍋を買って、蒸し野菜を作ってくれるようになりました。これがなかなか美味しくて、毎朝どんな野菜が食べられるか楽しみになりました。
昼食
昼食は妻の手作り弁当です。完全な炭水化物制限食ということではなく昼食には雑穀を混ぜたご飯を食べています。雑穀ご飯は糖の吸収を遅らせ、血糖値の上昇を抑制する効果があります。
※)ご飯は、米2合(300g)に、雑穀ミックス30g、水450mlを加えて、炊き上がり約700gの雑穀ご飯を80g食べています。
夕食
夕食には肉食に偏らないように、魚や納豆など和風の食事を心がけています。
私は納豆の糸引きと匂いが苦手ですので、よくかき混ぜて粘りを出した納豆に、上の写真の様にケフィアを混ぜます。こうすると納豆特有の匂いが消え、糸引きもなくなって食べやすく、非常に美味しくなります。
考察
第3図に示した空腹時血糖値はイレギュラーな値が見られますが、第2図に示したヘモグロビンA1cは順調に低下しています。ヘモグロビンA1cは2ヶ月間の平均値ですから、空腹時血糖値に比べ安定した結果が得られます。そのために糖尿病のコントロールの指標としてヘモグロビンA1cが採用されています。ヘモグロビンA1cが5.8以上になると糖尿病になります。第2図のヘモグロビンA1cを見ると、医者から糖尿病と診断された 2012年9月に6.4であったヘモグロビンA1cが 2013年5月には5.4に下がり、その後の検査では安定して5.4でした。炭水化物制限食とアロニアケフィアドリンクを併用した食事療法を行いましたので、それぞれの貢献度はわかりませんが、炭水化物の制限とアロニアケフィアドリンクの飲用によって確実に糖尿病が改善できることがわかりました。
食品別栄養素一覧表に示した1日の合計欄を見ますと、摂取エネルギーは 1,859kcal/日ですが、これは70歳以上の男性のエネルギー摂取基準※21,850kcal/日とほぼ同じです。同 じくタンパク質の摂取基準量※2が60g/日であるのに対して、私の食事では98gと1.6倍多くタンパク質を摂取しています。食品別栄養素一覧表に見るようにタンパク質の多い食品は脂肪も多く含んでいますので、タンパク質の摂取を増やすと、当然脂肪の摂取も多くなります。ヘモグロビンA1cを糖尿病コントロールの指標としたために、最初の2回はコレステロールの検査をしていませんが、脂肪摂取が多いことに気づき、コレステロール値も検査項目に加えました。第4図を見るとコレステロールの検査値は正常値の範囲内です。この結果はアロニアケフィアドリンクの効用であろうと思います。
第5図を見ると、体重も82kgから72kgまで下がり10kg減量できました。
私の身長は166cmですからBMI(肥満度)を計算すると、2012年9月に30でしたが、2013年7月には26になりました。腹囲も102cmから94cmになりました。男性のメタボの基準である腹囲85cmには及びませんが、炭水化物制限食とアロニアケフィアドリンクは、ダイエットにも有効であることがわかりました。
結論
「ご飯をやめて、ケフィアを主食に!」をモットーに、炭水化物制限食とアロニアケフィアドリンクの飲用を基本とした食事療法の結果、糖尿病の指標値であるヘモグロビンA1cを改善できることがわかりました。またこの食事療法はダイエットにも有効であることがわかりました。
Volume 21 Number 3 (October 1. 2014)
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