アロニア摂取による腸内細菌叢変化

小塚美由記

第73回日本栄養・食糧学会大会 

2019年5月17日~5月19日

 

要旨

アロニアには健康や病気に対して様々な改善・予防効果があることが知られています。例えば、我々の研究で、アロニアに含まれる成分がジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)や小腸のα-グルコシダーゼ活性を阻害することで、2型糖尿病・肥満モデルのKKAyマウスにおいて高血糖および内臓脂肪蓄積が予防されることを分かっています。近年、食事による腸内細菌叢の改善が病気の予防や治療に効果があると考えられるようになってきました。高脂肪食摂取によりフィルミクテス門の細菌は増加し、バクテロイデス門の細菌は減少しますが、アロニアの摂取によりそれらの変化は抑制されることがこれまでに報告されています。本研究では、16S rRNA解析により、アロニア摂取時のマウスの腸内細菌叢変化について、より詳細な分析を試みました。高脂肪食摂取によるフィルミクテス門の細菌の増加とバクテロイデス門の細菌の減少は、アロニア摂取により抑制されました。さらに、フソバクテリウム門およびフィルミクテス門 バシラス綱の細菌は高脂肪食摂取により増加し、これらの増加はアロニア摂取により抑制されました。また、アロニア摂取群では腸間膜脂肪組織重量の減少が認められたため、現在、腸内細菌叢変化との関連性について検討を行っています。

 
アロニアには豊富にポリフェノールが含まれていますが、摂取したポリフェノールの多くは小腸においてあまり吸収されず、90%以上が大腸へ入ることが報告されており(American J Clin Nutr 2005, Nutrients 2016)、高脂肪食摂取で増加するFirmicutes/Bacteroidetes比はアロニア摂取により増加が抑制されます(J Clin Biochem Nutr 2015)。本研究では、アロニア摂取による腸内細菌叢変化について、より詳細な解析を行ないました。図1に示したスケジュールで実験を行ないました。
F1

図1 実験スケジュール

その結果、アロニア摂取により腸間膜脂肪は減少し(図2)、属レベルの腸内細菌叢解析ではアロニア摂取群においてバクテロイデス属が増加し、プレボテラ属の減少が抑制され、クロストリジウム属、ラクトコッカス属、ツリキバクター属の増加が抑制されました。

 
F2

図2 アロニア摂取により腸間膜脂肪は減少する

 

 

F3a

F3b

 

 

図3 アロニア摂取による腸内細菌叢変化(属)

 

これらの結果から、アロニア摂取による腸間膜脂肪減少効果はアロニア含有物質による腸内細菌層の制御が関与している可能性が考えられた。今後、活性物質の同定およびそのメカニズムの解明が必要である。