トピック 3

光岡知足先生がメチニコフ賞受賞

  光岡知足博士(みつおか ともたり、東京大学名誉教授、理化学研究所
名誉研究員、77歳)は、発酵乳研究で優れた業績を挙げた科学者に贈られ
るメチニコフ賞を受賞されました。腸内細菌に関する先駆的研究が高く評価さ
れての受賞です。
  授賞式は2007年5月17日、モスクワ市で開催された国際酪農連盟主
催の「発酵乳の製造技術と栄養に関する地域会議」で行われました。5月17日はメチニコフの誕生日(1845年5月16日)の翌日に当たります。
1).メチニコフ賞について
  腸内フローラーの重要性を指摘しつつ老化はなぜ起こるのかの答えを求
め続けたメチニコフの名著「長寿の研究-楽観論者のエッセイ」が出版された
のが1908年であり、今年でちょうど100年になります。これを記念して国際
酪農連盟ではフランスのパスツール研究所ならびにISAPP(International
Scientific Association for Probiotics and Prebiotics)の協賛を得て、メチニコ
フ賞を設けました。本賞は発酵乳に関して最も優れた研究業績を挙げた科学
者に授与される世界最高峰の国際賞です。
  この度の受賞の名誉は単に光岡先生個人にとどまらず、日本における腸
内細菌に関する研究レベルが世界のトップクラスであることを示すものであ
り、日本の学界にとっても大きな名誉となるものです。
2)光岡先生の腸内細菌研究の概要
  この度メチニコフ賞受賞の対象になった光岡先生の腸内細菌に関する研
究は、次の五項目からなっています。
  @腸内細菌の培養法と腸内細菌の同定法の確立
  A新種腸内細菌の分離と分類・命名
  B腸内細菌の生態系の解析
  C腸内細菌の役割の解析
  D機能性食品創製への応用と展開
3)まとめ
  メチニコフは「老化はなぜ起こるか」を生涯の課題にし、その答えを求めつ
つもそれを解明することが出来ないまま哲学的思考を深化させてました。そ
の哲学的思考の抽象部分を、光岡先生は科学的に次々と明快に証明してい
った点が際立っており、多くの科学者が光岡理論に惹きつけられるのもこの
点です。光岡先生は腸内細菌の分離培養法を確立するとともに、腸管内で
のフローラの生態系の解析や保健効果の解明、さらには機能性食品の開発
の動機を与えるなど卓越した功績を挙げながらメチニコフの予見を見事に実
証されました。
  光岡先生の研究は先駆的であり、いわば手本となる実験方法が殆ど存
在しない中で自ら方法を開きつつ展開したものが多く、オリジナリティが極め
て高いのが特徴です。それ故に先生の萌芽的研究から多くの研究テーマが
生まれ、裾野の広い研究者層を形成しています。今日世界的に隆盛をみせ
ている腸内細菌の研究の基盤の構築に大きな足跡を残した光岡先生は、ま
さにその頂点に立つ世界的な泰斗であり、腸内細菌の研究分野はもちろん
のこと関連の医学分野、農学分野において光岡先生より学恩を受けた自然
科学者が非常に大勢います。                   (文責 中垣)